東京アメリカンクラブでの日本酒ペアリングディナー。栃木県内の4蔵元・日本酒7種類と栃木県食材をモニタリングした(2020年12月15日栃木県酒蔵酔って見っけ協議会実施)
日本のお酒を
世界に広げるサポート
日本産酒類の
ブランド化と
酒蔵ツーリズム
2020年度からスタートした国税庁の事業「日本産酒類のブランド化及び酒蔵ツーリズム推進事業」は、日本産酒類の海外市場開拓、輸出拡大を目指すためのプロジェクトの一つです。日本の酒類産業を取り巻く環境は、人口減少や成人一人当たりの飲酒量の減少で国内需要が縮小する課題を抱えているほか、生産者の中には後継者不足といった課題もあります。こうした酒類業界の抱える課題を克服するための取組の一つとして、日本産酒類の更なる輸出促進を図るのがこの事業の目的です。その目的を達成させるためのアプローチとして、高付加価値化をはじめとしたブランド化の推進や、地域活性化等のインバウンド効果等に繋げる酒蔵ツーリズムの推進が重要であり、jekiは20年度は酒蔵ツーリズムモデル事業を、21年度からは酒蔵ツーリズムだけでなくブランド化のモデル事業の調査事務局を担当しています。
ホップの名産地でもある岩手県遠野市の株式会社BrewGoodでは、外国人むけの地ビールツアーの造成や、ガイドテストを重ねた。地域全体でチームを組み、消費を喚起させる仕掛けをつくった。(2022年度株式会社BrewGood実施)
日本のお酒が「世界」に広がると
「地域」が活気づく
jekiが2020年度から事務局を行う酒蔵ツーリズムは、新型コロナウイルスの感染収束後、再び活況が見込まれる訪日外国人観光客をターゲットに考えられています。酒類事業者だけでなく、観光事業者や交通機関など地域が連携することで、国内の酒蔵やワイナリー、ブルワリー等を巡り、日本のお酒の魅力を体感、購入してもらい、帰国後も楽しんでもらおうという狙いです。輸出拡大はもちろんですが、インバウンド効果による地域活性化への効果も期待されており、本格的に訪日外国人観光客が戻ってくる前にモデルとなる事業を構築し、好事例を日本中で共有していくことを目的にしています。同様に、ブランド化推進事業も、輸出をさらに拡大させるために商品開発やネーミングやラベリング、イメージ動画などのツール制作を行うことで、高付加価値化を図り、それに見合った価格設定、そのためのブランド戦略を進める事業で、こちらもモデルとなる事業を構築する事業支援及び調査を行いました。20年度の酒蔵ツーリズムでは、数多くの応募から国税庁の審査で選ばれた16プロジェクトが参加し、21年度も酒蔵ツーリズムが6プロジェクト、ブランド化が4プロジェクトと計10プロジェクトが参加しています。
20年度の酒蔵ツーリズム事業では地域の酒蔵を巡るだけでなく、ホテルでの特別ペアリングディナーの開発や、地元の名産であるお肉とのペアリングに注力した事例や購入したお酒を持ち運ぶ煩わしさを解決する事例など、多様な視点で事業が進められました。その影響は輸出拡大への取組のみならず、モニターツアーや外国人対象のテイスティングイベントなどを通じ、地域内で地元のお酒の認知が高まるなど、思わぬ効果があがった地域もありました。また、多言語対応の問題に対する自動翻訳機の便利さが事業者同士で共有されるなど、お酒を通じた新たなネットワークも生まれています。21年度は長崎県の壱岐や沖縄など、お酒と島の魅力が掛け合わされたものをはじめ、ホップの産地である岩手県遠野市を巡るクラフトビールツーリズム、中部圏の観光ルートである「昇龍道」の地域性を生かした酒や酒器、アートがマッチングした事例や、北海道の酒とアイヌ文化を巡る旅など、テーマ性の高い魅力的なモデルが作られつつあります。日本産酒類のブランド化の事例でも、焼酎・泡盛を欧州でブランディングするためにパッケージの開発や飲み方を動画などで解説するものから、ブランディングの強化で世界進出を狙う富山の酒蔵、海外で日本産酒類を提供する人材を育成する研修動画の創出など、挑戦的な取組が始まっています。jekiでは、日本のお酒をもっと海外の人に知ってもらうために日本産酒類を深く知ることのできるサイト「YOUR SAKE JOURNEY」を20年より展開。日本酒や焼酎・泡盛、ワインなど、日本産酒類の歴史や製造方法を紹介するだけでなく、日本初の外国人杜氏であるイギリス人のフィリップ・ハーパー氏をはじめ、コンラッド東京のエグゼクティブソムリエの森覚(もり さとる)氏や日本を代表するミクソロジストの南雲主于三(なぐも しゅうぞう)氏など、日本のお酒を知る上で欠かせない人物へのインタビューを行い、お酒のグローバル化を裏側からサポートしています。
本事業のWEBサイト”YOUR SAKE JOURNEY”はこちら
日本各地で新たな産業づくり
地域のちから
プロジェクト
2017年にスタートした経済産業省・資源エネルギー庁の事業「地域のちからプロジェクト」は、前身の「地域のじまんづくりプロジェクト(13~16年)」から一貫して地域振興を行うプロジェクトです。その正式名称「原子力発電施設等立地地域基盤整備支援事業」からわかるように、原子力発電所の近郊地域、約25の市町村を対象に、経済振興につながる新たな産業づくりを行っています。ひとくちに産業づくりと言ってもその範囲は広く、観光や地域産品のプロデュース、販路拡大、イベントの開催など多岐にわたっており、地域の自治体や民間企業と協力しながらプロジェクトを立ち上げています。
これまで100以上の
プロジェクトが誕生
jekiの最終的な地域振興の形は、このプロジェクトに限らず「地域が自立・自走していくこと」です。だからこそ地域とは対等なパートナーとして関わり、ともにつくりあげようとしています。
ポイントは4つ。まずは活動の担い手となる「人づくり」。そして、地域のことに対し自分たちで取り組もうとする「主体性」。3つ目が、地域で稼げる仕組みをつくる「事業化」。最後に事業を続かせるための「継続性」を掲げています。
仕組みとしては、jekiが事務局となり、地域の行政機関や観光協会、商工会が一緒になって、個別事業者や地域住民を巻き込みながら事業をつくっていく流れです。事業を起こす途上ではさまざまな問題が起こってくるため、事務局にはバイヤーや料理人、クリエーター、ライターなど約200人の専門家がおり、課題ごとに専門家を派遣して解決を行い事業につなげています。その積み重ねのおかげでプロジェクトがスタートした13年から9年目を迎え、大小合わせ100以上のプロジェクトが誕生しています。
そのひとつ、北海道の積丹エリアにある岩宇4町村の連携からスタートした取り組みでは、神恵内村、岩内町、泊村も出資する地域商社キットブルーが立ち上がりました。このキットブルーを中心に、地域の名産品である「ウニ」や「ナマコ」を商品化し「積丹半島ブランド」「北海道ブランド」として全国、さらには世界への輸出を目指そうとしています。この地域商社が誕生するきっかけになったのが「Gan-wu Cafe」。まず何をするべきか模索するために域内の人々が集い、話し合いを重ねる場となり、人も事業も広がる基盤となりました。ユニークな取り組みも多く、青の半島プロジェクトのなかの「Oh! MUSUBI PROJECT」では、積丹半島エリアの12市町村にまで広がって、それぞれの名物食材を使ったおむすびを通して旅の提案を行っています。
他にも、宮城県石巻市では冬の集客の課題に対して市内の12店舗がタッグを組み、石巻オリジナルの「セリ鍋」で集客を図るプロジェクトがスタートしました。また、福井県の美浜町と若狭町ではサイクリング、カヤック、トレッキングなどのアドベンチャーツーリズムの開発が行われ、同じ福井県の高浜町では魚に特化した商業施設を21年の夏にオープンする予定です。運営法人の立ち上げからメニューの開発、オンラインショップの開設も行い、地域の中心として期待されています。こうした約25の市町村は年に一度集まり、活動の報告や交流を行うことで横の連携を図り、ノウハウを共有したり互いに刺激を与えたりしています。また、同じ悩みをもつ者どうしということで、新たなプロジェクトが生まれるきっかけにもなっています。
地域プロデューサー人材の育成
ふるさとプロデューサー育成事業
経済産業省・中小企業庁の「ふるさとプロデューサー育成支援事業(2015年度~18年度)」は、「地域プロデューサー」の育成を目的としたプロジェクトです。地域プロデューサーとは商品やサービスの流通やマーケティング、販路開拓などの地域が抱える問題を地域内外の人やモノとつないで、解決する人材のこと。jekiでは16年からこの事業に参画。19年にはデザイン経営によって商品だけでなく企業自体も強化する「ローカルデザイナー育成事業に関する委託事業」(令和元年度)へと広げています。いずれの事業も商業活動を通じた人材育成事業となっています。
人を育てることで地域創生は加速する
ふるさとプロデューサーが目指す最終的な形は、関わる場所を稼げる地域にすることです。そのために「地域とマーケット」「官と民」など、文化も考え方も違う組織の橋渡しを行う必要がありますから、地域の内情を理解した上で、地域の内外、世代や性別などを問わず、どんな人もつなぐマネジメント能力、言い換えれば人間力が求められます。
そうした理由から育成方法は、すでに第一線で活躍している経験豊かなプロデューサーのもとで中長期間(20~60日間)にわたって実地研修のOJT(On-the-JobTraining)で学ぶスタイルが採用されています。観光、ものづくり、古民家再生、イベント運営などさまざまな分野で先輩たちが取り組む後ろ姿から学び、実際に現場で作業を手伝うことで、暗黙知を含むノウハウを研修者たちは得ていきます。
その結果、数多くの修了生を輩出しています。海外市場への販路拡大を目指した「ふるさとグローバルプロデューサー育成支援事業」では、約140名もの方が研修に参加しました。その後「ふるさとデザインアカデミーichi」へと舞台は変わりましたが、地域のプロデューサー育成という面では変わっていません。
「ふるさとデザインアカデミーichi」のベースとなっているのはデザイン経営の考え方です。デザイン経営とは、社会環境が激変し、価格や機能以外のものが重要視されていくなかで、単に製品やサービスだけでなく、企業のアイデンティティやビジョン、顧客選びといったことまで、一貫した戦略を基にデザインしていく経営手法のことです。
この事業では商品の魅力はもとより、地域の歴史や文化など独自の魅力も加味して、地域の中小企業、小規模事業者への支援を行います。そのなかで、老舗の漬物店と酒粕を使った新たな商品開発に取り組んだ研修生は、マーケティングの専門家の意見を聞きながらターゲットを選定し、流通先やパッケージデザインを決め、老舗ブランドとは別のブランドを立ち上げて酒粕の販売を行いました。
その結果、洋食店や洋菓子店という新たな顧客を獲得することに成功しています。jekiでは、人材育成事業を通じて多くの地域プロデューサーを誕生させてきました。
その彼らは、専門家となった今、新たに手掛ける日本各地の案件で活躍しています。地域人材の育成事業は行えば行うだけ、地域の課題解決に直結するため、今では地域創生の中心事業になっています。
事業の再興、経済的な
自立・自走への取り組みを支援
ふくしまみらい
チャレンジプロジェクト
2016年より、経済産業省の委託事業「6次産業化等へ向けた事業者間マッチング等支援事業」としてはじまった「ふくしまみらいチャレンジプロジェクト」。東日本大震災の発災から10年余り。福島県の(原子力災害)被災12市町村の課題の一つとして、住民の避難等に伴う顧客の減少や長期にわたる事業休止に伴う取引先の減少等が挙げられます。この課題解決に向けて、事業者の現状やニーズをお伺いした上で、販路拡大に向けた取組を支援し、事業者の帰還、事業・なりわいの再建とともに、復興の後押しとなるよう取り組んでいます。
地域の「地力」を高め、
新たな未来へチャレンジ
原子力災害被災12市町村(田村市、南相馬市、川俣町、広野町、楢葉町、富岡町、川内村、大熊町、双葉町、浪江町、葛尾村、飯舘村)の課題解決のため、2016年から経済産業省委託事業「6次産業化等へ向けた事業者間マッチング等支援事業」として「ふくしまみらいチャレンジプロジェ ト」がスタートしました。この「ふくしまみらいチャレンジ」では、12市町村に所在する事業者を対象に「販路拡大」を中心とした支援を行っています。
販路拡大による事業の安定化や、事業者連携による新たな価値の創出を図っていくことで、経済的な自立と自走する地域づくりを目指しており、具体的には3つのアプローチ、「売り物」・「売り先」・「売り方」のいずれか、もしくはその組み合わせを変えることで商品のブラッシュアップを行い、売れる、そして競争力のある商品にしていく取り組みを行っています。
プロジェクトは、まず事業者への徹底したヒアリングからはじまり、それをもとに販路拡大の観点から支援プランを練り、約70名の専門家集団の中から支援チームをつくります。この支援チームが「売り物」を変える、「売り先」を変える、「売り方」を変えるといった3つのアプローチで商品を磨き、売れる商品にしていくのです。
プロジェクトは、決して順調な船出だったわけではありませんでしたが、事業者の継続的な取組によって徐々に結果も出てきました。例えば、ある食品メーカーはおみやげ中心であった商品群を見直し、高価格帯の商品を取り扱うスーパーマーケット向けに新たな「売り物」を開発しました。「売り物」と「売り先」を変えたことで食卓での日常品へと方向転換をしました。結果としてその後すぐに新型コロナウイルスの感染拡大がはじまりましたが、すごもり需要によって危機を回避することにもつながりました。
他にも、福島には素朴で昔から愛される食品などがたくさんありますが、それらを「福の小みやげ」という小さなおみやげの統一ブランドにすることで、個別で販売先を開拓していたものを、まとめて売ることができるようになり、効率よく販路を広げられました。今では、地域商社と組むことで、原価の見直しなど、より踏み込んだ販路開拓の議論まで行えるようになっており、このプロジェクトの最終目的である福島の復興に向けて、確実な一歩を踏み出しています。
構造的な要因により、福島だけに限らず、取引先の減少や地域需要の喪失は、他の地域でも起こりうることです。このプロジェクトで、事業の再興、経済的な自立・自走への仕組みを構築することが、他地域の課題解決の糸口を見つけることにもつながると考えます。
そういう意味で、この「ふくしまみらいチャレンジプロジェクト」は、これからの日本の未来に挑戦する取り組みでもあるのです。
官民連携のソーシャル
イノベーション
包括連携協定
人口減少、少子高齢化に伴い、地方は産業の衰退や自治体の財政悪化など、多くの問題に直面しています。そうしたなかでjekiはこれまで行ってきた地域創生の経験と豊富な解決メニューを生かして、自治体と協働しながら持続可能な地域社会の構築を目指すチャレンジを続けています。
クライアントではなくパートナー
jekiの官民連携を語る上で欠かせないキーワードが「パートナーシップ」です。これは連携相手である地方自治体をクライアントと考えてjekiだけが動いても、逆に行政のサポートだけを行ってもうまくはいかないからです。地域の問題は複雑であり、ひとつを解決すれば何もかもがうまくいくわけではありません。地域が存在する限り、問題は起こり続けるともいえます。だからこそ、jekiの考えるゴールは地域が自立・自走できるようになることです。
そのために、まずは地域が自立・自走する体制の整備をはじめます。その上で、地域に暮らす人たちが自分たちで地域を成長、発展させていくのです。だからこそ、より濃く、深く自治体と連携しなければならないと考えています。本気の自治体の「パートナー」となり、行政しかできないこと、民間だからできることにそれぞれ注力し、互いに補いあいながら進んでいく、それがjekiの目指す官民連携のソーシャルイノベーションです。
最初の包括連携協定は2018年3月、福島県田村市と結びました。締結後、とりかかったのは「場」の整備と「人」の育成でした。コロナ禍の今でこそ当たり前になりましたが、当時としては先駆けとなるテレワークセンターを国の補助事業を利用して設置。テラス石森と名付けられたセンターは地域の廃校を生かして、この場所をサテライトオフィスやコワーキーングスペースとして活用することでよみがえらせていきました。さらに、この場所をローカルビジネスの拠点として運営するまちづくり法人である一般社団法人Switchの設立も行い、運営する人材を募るため、役所の方とともに走り回り、5名の方の参加が決まりました。
まちづくり法人の運営を担う彼らも新たなチャレンジということで不安は大きかったはずですが、未来の道筋を行政の方々と伝えることで前向きにとらえ、田村市復活の火付け役となっています。
19年3月には長野県佐久市と、20年3月には群馬県みなかみ町と、そして21年3月にも秋田県にかほ市と包括連携協定を締結しています。いずれも体制を構築したのち、人材の発掘、育成、さらには創業、起業の支援を行いながら自立・自走の仕組みづくりを行っています。
田村市も連携のスタートから3年が経ち、拠点であるテラス石森は13室のすべてが埋まっています。地域の担い手となっていたまちづくり法人の理事のひとりは子育て支援の法人を設立してスピンアウトし、近いうちにもうひとりも独立する予定です。テラス石森が盛況ということで第2の拠点も誕生することが決まり、その運営もまちづくり法人であるSwitchが担います。
田村市のエコシステムは少しずつですが大きくなり、自立・自走も見えてきました。しかし、まだ問題は山のようにあります。これからも地域とともに新たな課題解決を目指していく、これがjekiの使命です。
観光列車のプロデュースは、
地域の魅力を最大限表現すること
スペースプロデュース
センター
移動手段という役目を担ってきた列車が、現在では訪れる土地の食を堪能できるレストランや、窓の風景を楽しみながらくつろげるホテルのような空間、エンタテインメントを楽しめるライブハウスのような空間にもなるなど、多様に変化しています。地域の食や文化の魅力を最大限引き出す“観光列車”をプロデュースする、これもjekiの大きな仕事のひとつです。
はじまりはコンセプトづくりから
観光列車のプロデュースをする際、そこに行かなければ出合えない列車、その列車に乗るためにわざわざお出かけくださる列車にする、という命題を意識します。よって、その列車は沿線地域の魅力を最大限に表す媒体でなければなりません。「沿線地域の魅力をどのように列車で表現すればよいのか」「どんなメッセージを込めればよいのか」「お客様に感じていただきたいものは何なのか」、そういったことを考えます。
スペースプロデュースセンターは地域の特性を分析するために、デスクリサーチ、フィールドリサーチ、WEBリサーチ等さまざまな調査を実施し、プロデュースする列車のコンセプトを導き出すことからはじめます。
調査から議論の末に導き出されたコンセプトを基に、ターゲットを設定し、列車コンセプトを策定し、列車のネーミングやロゴデザイン、車両デザイン(エクステリア・インテリア)、ダイヤ、車内サービス、ソフト開発まで、さまざまな分野の専門家と協力してクライアントに提案を行っていきます。最終的に地域の魅力が詰まった「のってたのしい列車」が実現します。
東北の復興支援から始まった「のってたのしい列車」
そのはじまりは、2012年に岩手県の一ノ関駅と宮城県の気仙沼駅の間で運行を開始した「POKÉMON with YOUトレイン」にまで遡ります。
東日本大震災で被災した子どもたちに笑顔を届けたいという㈱ポケモンのPOKÉMON with YOUの活動と、全国の子どもたちに東北を旅して、東北を元気にしてほしいというJR東日本の思いをひとつにした列車をプロデュース。列車コンセプトの作成から、外装・内装のデザイン、車内プレイルームの造作、各駅のオブジェ、おみやげ開発、スタンプラリーなど飽きずに楽しめる工夫を凝らしました。その結果、たくさんの子どもたちが乗りに来てくれました。
その後、14年4月には宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』をテーマにした「SL銀河」が、同年7月には足湯と地元の食が楽しめる新幹線車両を改良したリゾート列車がデビューするなど、さまざまな列車をプロデュースしてきました。最近では、日本海の絶景と庄内の田園風景が楽しめる羽越線を走る「海里」(19年10月~)で、花街として知られる新潟・古町の一流料亭や庄内で有名なイタリア料理店の食事を楽しむことができるようにしました。こうした「のってたのしい列車」を実現することで多くの方に地域の魅力を広めています。
四季島のブランディングから始まった富裕層マーケティング
また、スペースプロデュースセンターの強みは富裕層をよく知る点にもあります。東北・北海道新幹線や北陸新幹線の一部に設置されている「グランクラス」では、車両コンセプトにあわせて18年から軽食や飲料の見直し提案を行いました。
17年5月にデビューしたJR東日本のフラッグシップトレイン「TRAIN SUITE 四季島(以下、四季島)」では、ご乗車されるお客様が何を求めていらっしゃるのかという視点に立ち、車両コンセプトに合わせたブランディングを行いました。
その範囲は広く、四季島が訪れる地域や案内人の提案、その土地の風土や食材を魅力的に生かしているレストラン・料理人の開拓、地域の魅力ある伝統工芸品やそれを生み出す職人の紹介、車内アメニティの全体監修まで行っています。
最大17室、34名とごく限られたお客さましか乗車できない、乗車自体が旅の目的となるクルーズトレインだけに、コンセプトである“深遊探訪”に合わせ、関係者だけでなく、もてなしてくださる地域の方々への理解や共感を深めるツールの整備など、具体的な提案を行ってきました。
情報発信では、ターゲットとなるお客様を多数読者として持っている媒体を選び、四季島のコンセプトである“深遊探訪”をご理解いただいた上で記事にしていただくことで、ブランドイメージを守り、育てています。地域の魅力を発掘しながら、富裕層へのアプローチを目指す。コロナ禍で現在は小休止の状態ですが、日本のインバウンド戦略で目指す姿がここにあるのです。
地域の魅力の販路拡大
JR東日本グループとの
連携
少子高齢化による人口減少は都市よりも地方で深刻化しています。労働者不足はもちろん、消費者が減ることで、これまでの地元市場以外の販路開拓が必要となっているのです。地域経済の振興に取り組むjekiは、地域経済を支える農水産物をはじめとする地域産品のブランディングやブラッシュアップで新たな価値を付加し、販路拡大の支援を行っています。JR東日本グループが持つ豊富なアセットとネットワークを利用することで、地域の自立、自走を積極的に応援しています。
最大の強みは
JR東日本ネットワークとその安心感
1968年以降、いちご生産量日本一の座を誇る栃木県。代表的なブランドは「とちおとめ」ですが、2014年に粒が大きくて形が良くジューシーな「スカイベリー」の品種登録を行いました。高単価の新品種としてスカイベリーは農家の所得向上の期待を背負い、市場に投入されましたが、知名度はなかなか上がらず、バイヤーからの引き合いもあまり好調と言えなかったことから、いちご王国である栃木県は頭を悩ませていました。
そこで、スカイベリーは美しい形と粒の大きさが魅力であることから、価格や量で幅広い需要を開拓するのではなく、質や見た目を追求する、ある程度の所得を持つ層へのアプローチを行い、高所得層の多い首都圏の攻略を目指すことになりました。その戦略は、スカイベリーの特徴を生かす高級感のあるブランディングと単価の高い小売、飲食店から販路拡大を狙うものでした。
プロジェクトはまず、食べる機会の創出からスタートしました。JR東日本グループの高級スーパー紀ノ国屋に積極的な販売の依頼を行い、さらに東京駅のエキナカ商業施設である「グランスタ東京」では、入居する小売、飲食のテナントさまの協力を得て、スカイベリーを使用したスイーツフェアの開催をお願いしました。そのうえで、スカイベリーの効果的なプロモーションを考えました。
上品なイメージのある丸の内で働く女性をターゲットに、JR東日本グループ企業のラグジュアリーホテル「東京ステーションホテル」とのタイアップを行い、宿泊の方限定の朝食ラウンジ「アトリウム」で、スイーツのお披露目会を開催しました。
その結果、お披露目会の当日にはスイーツの登場とともに歓声があがり、メディア関係者、インスタグラマーも含めた招待客からはSNS拡散を含め、評判も上々、協力いただいたテナントさまからの引き合いは今も伸びています。
地域産品のプロモーションを行う場合、最も重要なことはプロモーションの時だけでなく、その後もお店に継続購入してもらうことです。お店には決まった仕入先が存在するため、プロモーションに協力していただくお店には、普段の仕入れ先から購入してもらうようにしなければいけません。
もちろん、そのためには卸売業者への事前の根回しが必要であり、調整も必要ですが、バリューチェーンを押さえることにより継続した購入は実現されるのです。さらに、地域経済の振興を図るうえでJR東日本グループのネットワークは強みですが、まだ生活サービス領域の幅広さは知られていないので、このネットワークを生かし切れていません。今後より一層JR東日本のグループ力を生かしながら、jekiは地域のハブになることを目指していきます。
大型イベントで故郷の文化、
魅力を一挙に紹介
ふるさと祭り東京/
ツーリズム
EXPOジャパン
コンベンションホールやスタジアムで行われる大規模イベント。その運営や広報宣伝活動などもjekiが手掛ける仕事のひとつです。ただし、私たちが手掛けるイベントのほとんどが日本の地域を元気づけるもの。その代表例が、日本各地の祭り、食が一堂に会する「ふるさと祭り東京」。そして、世界三大観光展のひとつ「ツーリズムEXPOジャパン」です。いずれも入場料をいただくため高いクオリティが求められますが、期待に応える大規模イベントを行うことで地方の優れた文化を広めるとともに、文化の継承にも役立とうとしています。
10日間で約44万人を動員。
いまや冬の風物詩
毎年、新年を迎えると東京ドームでは、日本各地のお祭りや食が集まるイベント「ふるさと祭り東京」が行われます。出展社数は例年300社を超え、2020年は1月10日からの10日間で、443,237人もの来場者を記録しています。年末年始に帰省できない首都圏の人たちにふるさとの味や雰囲気を感じてもらおうと09年からはじまったこの「ふるさと祭り東京」は、いまや冬の風物詩。国内有数の人気イベントになりました。
人気の理由は、青森県の青森ねぶた祭や八戸三社大祭、高知県の高知よさこい祭り、沖縄県の沖縄全島エイサーまつりなど、日本各地の祭りが一流の担い手とともに毎年、東京にやってくるからです。間近で各地の祭りが楽しめると、その迫力を求めて来るのです。また、丼ものや麺類、パンにスイーツ、お酒など、各地の食文化を楽しめるのも、もうひとつの人気の理由です。食に関する企画では、「全国ご当地どんぶり選手権」や「イケ麺スタンプラリー」などが行われます。なかでも「全国ご当地どんぶり選手権」は人気が高く、グランプリを獲得すると観光庁長官賞の称号とともに新たな地元の名産として、旅行者の誘致につなげることもできます。そのため、大会のレベルは年々高まり、現在では予選を勝ち抜いた11どんぶりと、前回上位を獲得した3どんぶりの計14どんぶりだけに本選出場が認められています。ちなみに、投票によって選ばれた20年のグランプリは島根県の「のどぐろ丼」。19年に引き続きのグランプリということで見事殿堂入りどんぶり(殿丼)となりました。
そして、もうひとつの事例が日本の新たな中核産業となった観光業界の最大イベント「ツーリズムEXPOジャパン」。2019年10月24日〜27日には、東京以外では初めてとなる「ツーリズムEXPOジャパン2019大阪・関西」が開催され、jekiは2018年の東京開催に引き続き、全体運営を担当、国内自治体や外国のブース運営も行いました。
世界100の国と地域、国内は47都道府県から併せて1475の企業、団体が出展し、来場者も15万1099人と想定を上回り、商談件数も8392件を数えるなど、飛躍的な成長を遂げる観光業の勢いを表すイベントです。EXPOでは出展ブースの訴求力を競うブースグランプリが行われ、jekiが北海道観光振興機構・JR北海道から受注した「Good Day北海道」が、業界関係者からは準グランプリを、一般の方々からの投票ではグランプリを獲得しています。また、韓国観光公社から受注した「こんな韓国初めて」も、業界日に実行委員長賞を受賞しました。
新型コロナウイルスの感染拡大で、2021年のふるさと祭り東京は、オンライン開催になってしまいましたが、こうした大規模なイベントは、開催する大都市圏の人々にとってはお祭りであり、知られざる各地の魅力を知るチャンスです。一方で、各地域にとっても長年続く祭りや、ふるさとの味など、各地の誇るべき文化を一気に多くの人に知ってもらい、後世に伝える貴重な機会になっています。
