Regional Producer

地域プロデューサー:大森 愛

大森 愛

2022.09.16

はじめまして。大森愛と申します。

大前提として「あなたは地域プロデューサーですか?」と聞かれると、

「そうです」とは一概に答えられません。

というのも、肩書きとして自ら地域プロデューサーと名乗っているわけではないためです。

なので、こうしてここに記事を書いているのもなんだか変な感じですが、

私なりの地域プロデューサーとしての役割と想いをお伝えしたいと思います。

私が地域プロデューサーになるまで

はじめに、私がこのチームiCHiで地域プロデューサーとしての役割として関わることになったきっかけをお話ししたいと思います。

私は今でこそフリーランスとして働いていますが、前職では伝統工芸のPRやバイヤーをしていました。

職人の方々や工芸品が暮らしにどう組み込まれているのか、さまざまな地域に出向きリサーチをすることが多かったのですが、そういった活動を重ねるうちに、職人や工房、工芸品について知ることはもちろん、もっとその地域の風土や根ざしている文化を知ることが大事ではないか。

そう思い、たまたま目に留まった”ふるさとプロデューサー研修”のプログラムに申し込みました。

”研修”と書かれていたこともあり、てっきり養成講座だと思って門を叩いたのですが、いざ蓋を開けてみると、地域で既に多くの実績を積んで活躍されている人たちばかりが受講生として参加しており、そのスキルの差に愕然としました。

さらに追い討ちをかけたのが、ハードなプログラム内容です。

約半年の間、毎月どこかしらの地域へ一泊二日で視察をし、既に地域プロデューサーと名乗って活躍されている講師の方の働きや暮らしに触れ、最終日にその地域で貢献できそうなことや考えられるビジョンについてプレゼンするですが、他の受講生と異なり経験がないこともあり、何をどうすればいいのか全く分からず途方に暮れ試行錯誤する日々。

(写真にあるようなフィールドワークは楽しかったのですが、問題はその後でした、、、)

毎回自分なりに解釈をして課題に取り組みつつも、講師からのフィードバックに

正直心が折れることも何度かありました。

しかし地域を訪れる度に刺激を受け、いつの間にかこの研修に

前のめりになっている自分に気付きました。

分からないものは分からないと聞き続け、劣等生なりにプレゼンでは夜遅くまで資料づくりに励み、

がむしゃらに食らいつきました。

当時を振り返ると、自分でもかなり面倒臭いやつだったなぁ…。

講師の方や地域の方々もよく見捨てずに付き合ってくれたなと思います。

そんな全力を注いだ研修で出会った方々は今でもかけがえのない仲間です。

地域プロデューサーとしての活動を通じて

半年間のふるさとプロデューサー研修の影響なのか定かではありませんが、プログラム修了後は

地域活性分脈の事業を中心とした活動を続けていました。

そんなある時、ふるさとプロデューサーの講師だった方から「一緒に地域活性の事業をやってほしい」とお声をかけていただきました。

受講生だった頃よりは成長できているという自負はありましたが、仕様書・予算・年度という枠がある中での企画やディレクションをしてきた自分にとって、仕組みづくりから取り組む事業に携わることは初めてで大きな挑戦でした。

いざ地域の方と共に伴走しながら事業に取り組んでみると、企画の段階では決して気づくことの

できなかった地域独特の文化やコミュニケーションによる齟齬など予期していなかったことが

次から次へと起こり、何一つシミュレーション通りに進まず悪戦苦闘の連続。

「よそ者の私が何を言ってもダメなのかもしれない」

「もっと経験のある人の方が納得できるのかもしれない」

と弱気になることもなかったと言えば嘘になります。

また、地域を相手にした場合、ひとつひとつの振る舞いや言動、全てが信頼問題につながります。

それも私の信頼問題ならともかく、地域で頑張っている人たちの信頼問題につながります。

プロデューサーの役割を担う人の小さな判断が、その人たちの暮らしそのものに大きく影響するのです。それを体感した時に、”自分に何がやれるか”ではなく”この地域やここで暮らす人たちのために何をやるべきか”をきちんと考えよう。そうスイッチしました。

あの時の震えるほどの覚悟と決心が、私にとってのいわゆる地域プロデューサー的な仕事のスタートラインだったように思います。

地域プロデューサーとしての想い

ありがたいことに、今ではチームiCHiとしても、それ以外のプロジェクトでも地域に関わる仕事を

いただく機会が増えました。

ただ、冒頭にも記載しましたが自分自身で「地域プロデューサー」という肩書きを名乗ることは

していません。

その役割は周りが決めることだと思っているからです。

これからも私は”自分に何がやれるか”ではなく”この地域やここで暮らす人たちのために

何をやるべきか”を考え続け、行動し、出会う人たちと肩を並べて走り続けていきたいと思います。

地域プロデューサー

大森 愛(おおもり あい)

大学卒業後、広告代理店の企画営業を経て、メーカーの新規事業部にて商品開発・コンセプト立案・販路開拓・ブランディング・宣伝P Rなど開発から販売までを一貫して従事。その後、伝統工芸や地場産業に特化した企業にて日本全国の職人や工房のある地域を訪ね歩き、それぞれの歴史や文化、想いに直に触れる。独立後は食・環境の分野を中心としたプランニングディレクターとして日本各地の地場産業やまちづくりなどに幅広く携わる。