
雪国観光圏は、新潟県魚沼市、南魚沼市、湯沢市、十日町市、津南町、群馬県みなかみ町、長野県榮村の7市町村を圏域とする世界有数の豪雪地帯の文化を継承しようと集まったグループだ。インバウンドはこれまで、東京からわずか70分というアクセスの良さ、新幹線直結のスキー場や宿泊施設など、受け入れ体制を強みに、冬場のスノーアクティビティーを楽しむアジア系旅行者の短期滞在が中心となっていた。しかし、インバウンドの誘致競争の激化、日本人のスキー人口減少などに対応するため、新たな市場の開拓が課題であった。そこで、長期滞在で高単価な旅行者の獲得を目指すため、欧米インバウンド誘客へと戦略を転換した。長期滞在してもらうにはスノーアクティビティーだけでない新たな価値の提案が必要なことから、縄文の頃から続く雪国文化に着目した。当地域は豪雪地帯でありながら、縄文時代から人々が暮らしてきた世界でも類を見ない地域で、雪を乗り切るための独自の知恵が根付いている。こうした観点から、本物の文化に触れる、新たなラグジュアリーの提案を行った。地域の資源である「自然」や「文化」「伝統」、「そこに暮らす人々」を活かして、外からの旅行者を受け入れ、地域経済を発展させ、同時に、「自然環境」や「文化」「伝統」を守っていく取り組みだ。
雪国観光圏の取り組みは、宿泊施設の国際的な基準である「サクラクオリティ」の導入。雪国の食文化を継承していきたいという思いからスタートした食の認証制度「雪国A級グルメ」。雪国文化を多様な視点で深堀する「雪国文化研究ワーキンググループ」の運営とフリーペーパーの「雪と旅」発行の4つで、この延長線上にインバウンドがあると考えている。
雪国観光圏では調査によって、旅行者は「見るだけ」の体験やありきたりなマスツーリズムではなく、交流による本物の文化体験、自分自身が変化する自己変革を旅行に期待していることを汲み取ったことにより、旅を「自分の見聞・教養を拡張する機会」ととらえた。こうしたニーズに対し、顧客の共感を得るためにハイクオリティな宿泊施設が連携してファーストクラスのプロダクトを創出し、統一感のある地域として牽引していくことが必要だと考えている。彼らはこの取り組みを「TIMELESS YUKIGUNI」とブランディング。高品質化を進めるとともに、世界に向けて明示・発信しようとしている。
今年度は、「TIMELESS YUKIGUNI」のロゴマーク、ロゴステートメントを作成、WEBページからの発信を行った。また海外に向けては、特設ページをフェイスブックに開設し情報を発信。半年でページフォロアー数1,120件を獲得した。さらに、プロモーションとしてオンラインプレス発表会・商談会をヨーロッパ5ヵ国(フランス、イギリス・イタリア・ドイツ・スペイン)で実施するとともに、多言語アプリの開発や6ヵ国対応のデジタルパンフレットの作成、お客様問い合わせ窓口の設置など体制整備を行った。
外国人専門家には、欧米富裕層の志向、ニーズに深い知見を持つ米国出身のコーリー・ミクガワン氏を起用した。氏は社交クラブである「東京アメリカンクラブ」に強いパイプがある。氏から「コロナ後の誘客には、海外への口コミネットワークを持っている駐日外国人への積極的なモニターツアー、販売が必要」とのアドバイスを受け、東京アメリカンクラブへの営業活動を開始したが、コロナ禍のためイベント等が延期となり、コロナ後を見据えたコネクション強化にとどまった。今後も、本年度の取り組みで得られたナレッジ、コネクション、アウトプットを活用して、「雪国文化」の価値を高めるため、さらなるブランドの磨き上げと発信を実施していく予定だ。