
サーフィンやサザンオールスターズなど茅ヶ崎といえば海やビーチが思い浮かぶ。一般社団法人Total Beach Sportsは、茅ヶ崎DMO(茅ヶ崎観光協会)、神奈中商事など地域に根差した8つの組織や企業とともにビーチを活用したインバウンド拡大を目指している。一般的にビーチの活用は海水浴や花火大会の会場などの夏だけの利用が多いが、茅ヶ崎を含む湘南では富士山や江の島といった美しい景観やサーフィンなどのマリンスポーツも盛んなことから、四季を通して多くの人が利用する。また、ビーチスポーツも盛んで代表団体Total Beach Sportsの代表理事である相澤幸太郎氏はビーチテニスの元日本代表選手であり日本代表監督。現在は、他のアスリートとともにビーチスポーツ、イベントなどの普及にあたっている。2021年9月に湘南で行われる国際大会開催に向け、海外トッププロの参加を促し、彼らを呼び水として湘南地域へのインバウンドの拡大を図ろうとしている。事業の背景には、アスリートの競技を続けることの難しさやセカンドキャリアの問題があり、インバウンド需要を創出することで観光事業やスポーツ人材の育成といった新たな事業を生み出して、これらの問題を解決していこう、という願いがある。茅ヶ崎モデルはインバウンドがアスリートを支えていくユニークな観光振興事業だ。
現在の国際テニス連盟(ITF)において世界ランキングがあるのは、テニス、車いすテニス、ビーチテニスの3つ。ビーチテニスは世界37か国300大会がITF公認大会として実施され、世界ランキングのある選手は2万人、愛好家も入れるとその規模は4~5万人と言われている。日本でも25大会行われ、ITF公認大会はそのうち6大会。しかし、日本の大会に参加する海外選手は毎年10名程度と極めて少ない。開催予定の国際大会でも外国人選手の誘致拡大が課題だ。そのため今回のターゲットは、国内外のトップアスリートとその家族、そして国内外のジュニア選手、ビーチスポーツファンや観客とした。
大会開催も決まったが、ターゲットに提案する通年型の海岸活用案と街なか回遊のコンテンツづくりが急務である。コンテンツ作成に際しては、まず課題から洗い出した。来日した外国人選手からよく聞く「不便、不安な点」だ。例えば、飲食では、どこが美味しい店か、価格がいくらか分からない点。宿泊では、大会会場から近いか、周辺に飲食店やコンビニがあるかなどだ。特に多かった意見が公共交通機関での移動が難しいという点だ。併せて、世界ランキング元1位のアレックス・ミンゴッチ選手に来日した際に感じたことをヒアリングしたところ、「コンシェルジュ」や「パッケージツアー」があればありがたいとの意見が出た。これらの意見を踏まえ、日本在住の外国人ファミリーに協力してもらいモニターツアーを実施、イメージ動画を作成した。
ひとつは、引退したトップアスリートが、ツアーのコンシェルジュを務め、海外ツアーの経験をいかしながら観光や食事の場所を案内、ビーチの過ごし方を提案するなど選手のセカンドキャリアの新たな役割を意識させるもので、茅ケ崎の良さを英語でシーンごとに丁寧に解説した動画になっている。もうひとつはインターナショナルビーチツアーへの招待と現地の魅力を簡潔に伝えた動画の2本。それを、ブラジル、イタリア、ベネズエラ、ロシア在住の4名の世界のトッププロからSNSで発信してもらった。今後は、動画のブラッシュアップを図り、8ヵ国8名の選手から配信する予定だ。また目標をリーチ数を5万人以上、9月の国際大会には男女4ペアの参加にしている。日本ならではのビーチスタイルの確立にチャレンジする意欲的な取り組みである。