
ファッション・ウイークは年2回、世界のファッション都市で開催される祭典。なかでもパリ、ミラノ、ロンドン、ニューヨーク、そして東京の5つの都市は5大ファッション・ウィークと総称され、その最新ファッションは世界中から注目を集める。コロナ禍により2020年3月に予定していた「Rakuten Fashion Week TOKYO」は一部ブランドの無観客オンライン配信以外のイベント開催をすべて中止。そのため国内のファッション関連産業にも多大な影響を及ぼした。その裏で、世界のファッション・ウイークは開催を延期しながらリアルなショー・イベントの再開を残しつつ、デジタル化の動きを加速させている。東京も他都市同様に日本ブランドを守り成長させていくためにも、変化を商機ととらえ、東京らしいデジタル化を推進することに決定した。デジタル化に際しては、これまでのファッションショーが業界関係者と一部ファン、顧客層に向けたクローズドなイベントだったものを、デジタルを軸に世界配信することで革新的なものにし、オープンな存在になる。それが参加ブランドだけでなく、日本各地の優れた繊維製品や産地の露出を図ることにつながり、世界中の人々に届く文化的なコンテンツとして認められれば、日本のファッション産業に対する関心度を国内外で高め、インバウンド、アウトバウンドにつながっていくことでもある。
本事業は、従来のターゲットであるバイヤー、ジャーナリスト、インフルエンサー、熱狂的なファンといったファッション関係者から、新たに国内外の高感度な一般消費者層にまで範囲を広げる狙いではじまった。これにより、日本ファッションへの興味喚起だけでなく国内産地の取り組みやファッション文化などを幅広く発信することになった。今年度は、ファッションショーのデジタル化、グローバルECサイトの企画、実施を行った。デジタル化については、フィジカルなショーに匹敵するプレゼンテーション方法を検討するため、「ヴォーグ・イタリア」のサラ・マイノ副編集長やピッティ・イマージネS.r.l社のマーケティング&デヴィロップメント・マネージャーのアントニオ・クリスタウド氏など欧州で活躍するファッション関係者6名を外国人専門家として起用。彼らからは。「デジタルにこだわらない日本人らしい繊細なプレゼンテーションに挑むべき」「展開するブランド数を増やし、多様性、多面性を表現する」などのアドバイスを受け、多様性の観点からブランドを10に増やした。
プレゼンテーションについては、多数のカメラを設置した新宿御苑の温室でのショーのライブ配信。VRやロボット、多彩な角度からの映像で臨場感や驚きの演出など10ブランド十色のプレゼンテーションが実施できた。
グローバルECサイトについては、国内の人気ファッションブランドを日中英のトリリンガルで表記。外国人専門家からは「誰もがアクセスしやすいようにファッション・ウイークのWEBを開くとすぐに動画にリーチできるように」「ショースケジュール等がすぐにわかるように」「知名度のあるインフルエンサーの活用」といった意見が提案され、これら意見を反映し、WEBサイトをリニューアル、著名なインフルエンサーによるショーの解説動画の発信、月間ビュアー数4千万超のメディア「WWD」でスケジュールなどを掲載した。
その結果、総視聴数を6万回、広告換算値70億円の実績を上げ、ファッション・ウイークのWEBビューについては昨年対比で3倍の伸びを示した。特に、アメリカ、中国、韓国からのビューが多いなどデジタルとフィジカルの融合が大きく評価される結果となった。次年度は展開ブランドをさらに増し、より幅広いターゲットにアプローチしていく構えだ。